ANAとJALを徹底比較
機長らの飲酒問題を抱えながらも、ANAホールディングス(9202)と日本航空(9201)の業績は堅調に推移。訪日外国人の増加、ビジネス客を中心にした日本発需要の伸びなどが背景にある。燃油価格の高騰など利益圧迫要因があるが、2社とも2019年3月期の売上高アップを予想。現況と従業員給与などを比較してみた。

JAL破綻直前の2009年の状況
最初に2009年3月期の数値を確認したい。日本航空(JAL)が経営破綻する直前の両社の比較ができるからだ。
2010年1月にJALが経営破綻したとき、負債総額はおよそ2兆3200億円だった。同社はその後、金融機関などの債権放棄(5215億円)や大規模リストラを経て経営再建。公的支援(3500億円)も全額返済。再上場は12月9月である。

2009年3月期は、リーマンショックが引き金となって未曽有の金融危機に陥り、世界的な景気後退の影響を受けた決算でもある。JALはいうまでもなく、ANAホールディングスも赤字決算だった。
当時の企業規模は、現在とは正反対であることが読み取れる。JALの売上規模はANAホールディングスの1.4倍、国際線旅客収入に限れば2.4倍だった。グループ従業員数や航空機数(リースを含む)、航空機資産額もJALが上回っていた。
ただし、JALは基本給の一律10%減額など、コストカットや人員削減で経営危機を乗り越えようともがいていた時期である。手持現金の持ち出しが多額だったこともあり、総資産額は2008年3月期比でおよそ3720億円の減少。過去からの利益の蓄積を示す利益剰余金は赤字に転落。危険シグナルが点滅していたことは明らかだ。
2009年3月期のANAホールディングスで目立つのは、納税額1201億円である。2018年3月期の353億円と比較しても3.4倍という高水準。ホテル事業子会社・関連資産の売却益があったことが主な要因だ。その一方では、AIRDOやスターフライヤーなどへ資本参加するなど、社内の構造改革や事業拡大に向けた動きを進めていた時期である。
当時は、官民一体の支援を受けるJALに対して、自助努力のANAホールディングスという構図だった。
それがJALの経営破綻を境に、ANAホールディングスが国内航空トップの座を確たるものにしてきたことはいうまでもない。