MONEYzine(マネージン)

テーマ別に探す

金融の機能がバラバラになり、フロントエンドでの戦いが始まる

  • ブックマーク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2019/03/29 12:00

金融機関の機能が分解され、新たなサービスに生まれ変わる「アンバンドリング」「リバンドリング」はなぜ可能になったのでしょうか。その背景にあるものを、マネーフォワードFintech研究所長の瀧 俊雄さんが解説します。

銀行ができる3つの「固有業務」

 いま、フィンテックの世界で起きていることの1つに、従来の金融機関が担っていた複数の機能を分解し、それを使って新しいコンセプトを持つ企業がこれまでになかったサービスを生み出す動きがあります。今回はこうした動きが生まれる前提に立ち返って、解説していきたいと思います。

マネーフォワードFintech研究所長 瀧 俊雄さん
マネーフォワードFintech研究所長 瀧 俊雄さん

 ちょっと硬い表現ですが、銀行法では「固有業務」というのを定めています。固有業務は3つあり、それが「預金」「貸付(融資)」「為替」です。

 「預金」はお金をお預かりして、利息を乗せて、絶対に元本を返しますという約束をすること。実は個人や会社が継続的にそれをやろうとすると、「出資法違反」に問われる可能性があります。お金がないから友だちに1万円借りて、翌日ありがとうと言って返す。そういう事例は問題ないのですが、それを継続的に、いろんな人から集めようとすると、出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)に引っかかってくる。ですから、預金として受け入れていいのは一応銀行だけということになっています。

 2つめの「融資」は固有業務ということになっていますが、皆さんご存知のとおり、消費者金融を含むノンバンクは銀行ではないですけど融資は可能ですよね。

 3つめの「為替」をわかりやすく言い換えると「ある場所でお金を預かって、別の場所でそのお金をリリースすること」というふうに言えます。たとえば私が東京にある銀行のA支店にお金を預けて、京都のB支店でお金を下ろしたいと思ったとします。このとき、A支店は私が預けたお金をB支店に送る必要はありません(送金する場合もありますが)。現金を移動させなくても、私は京都でお金を下ろすことができる。古代のヨーロッパとかで旅をしている人のことを考えると、この機能がどれだけ便利がわかりますよね。

銀行に期待されていること

 このように銀行というのは「預金・融資・為替」という固有業務の3つができる機関なのですが、「預かった/支払ったお金をちゃんと扱ってくれるよね」というのも銀行に期待されているところです。融資をする際にもちろんリスクは取りますが、リスクを取りすぎて回収できなくなって、その銀行が破産したりすると起きるのが「連鎖倒産」です。

 銀行から明日振り込まれてくるはずのお金を頼りにしているA社があって、A社から明後日振り込まれるお金を頼りにしているB社がいる。でもA社がつぶれると、B社にも債務不履行がきて、そのまた先にも……というよう連鎖倒産が起きる可能性がある。つまり「お金を支払うよ」っていう契約が銀行システムの中に蓄積されている。決済機能の「システミックリスク」と呼ばれているものですね。

 本来銀行が厳しく規制されるのは、主にその2つの要素「預かったお金を守らなければならない」「システミックリスクを抱えている」というのがあるからです。また、社会に対して大きな影響を与えうる主体として、ちゃんとした人たちを雇い、銀行内部の誰か1人が悪いことをしようとたくらんだとしても、それを食い止める仕組みを持った組織であることが求められる。「銀行は規制される」とよく言われるのはそういう理由があるからなんです。

 「銀行員」というと、「スーツを着ていて、真面目そうな人」というようにイメージする人は多いと思いますが、法律に「スーツを着なさい」と書いてあるわけではありません。法律では、信用秩序を維持しながら、お金をちゃんと預かりなさいというように「機能」に注目しているわけで、銀行というのは「機能的な存在」なんです。

 銀行が複数の業務を受け持ち、それらをサービスとして全部やっている状態を表すのが「バンドリング(bundling)」という概念です。一方、個々のサービスをそれぞれ得意な人がやり始めることを「アンバンドリング(unbundling)」、分解したものを別のものと組み合わせることを「リバンドリング(rebundling)」と言います。


  • ブックマーク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

著者プロフィール

  • 瀧 俊雄(タキ トシオ)

    マネーフォワード 取締役執行役員、マネーフォワード Fintech 研究所長
    2004年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券株式会社に入社。株式会社野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。スタンフォード大学MBA、野村ホールディングス株式会社の企画部門を経て、2012年より株式会社マネーフォワードの設立に参画。経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」に参加。金融庁「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」メンバー。
  • 慎 芝賢(シン ジヒョン)

    フリーカメラマン 日本大学芸術学部写真学科卒業後、朝日新聞出版写真部勤務。
    2014年フリーカメラマンに。
    雑誌・書籍・新聞・web媒体を中心に撮影を行う。

本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る

All contents copyright © 2007-2019 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5