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金融における「信用」とは、「日銀コイン」がある社会と「消えない情報」のはなし

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2019/04/26 12:00

もし日銀が電子マネー「日銀コイン」を発行したら、人はどんな行動をとるのでしょう。そのときには金融における「信頼」を成り立たせるものが変わる可能性もありそうです。マネーフォワードFintech研究所長の瀧さんが解説します。

電子マネーの払い戻しできないのはなぜ?

 今回は、金融における「信用」とは何かについて考えてみたいと思います。そのためにちょっと遠回りになりますが、私たちの身近にある「現金」や「電子マネー」から話を始めてみましょう。

マネーフォワードFintech研究所長 瀧 俊雄さん
マネーフォワード Fintech研究所長 瀧 俊雄さん

 デジタル通貨について多くの人が抱いているイメージは、硬貨や紙幣などの日本円がデジタル化されているというものだと思います。お金というのはよく「資産」と言いますけれど、それを発行している人にとっては「負債」なんですね。日本銀行券を出している日本銀行は負債者です。日本銀行が発行している日本銀行券は、2019年2月時点で100兆円くらいあります。

 また、お金を指して「現金」という呼び方をしますが、これは現物感がある表現ですよね。でも、経済学的には別に紙であってもデジタルであってもいい。それよりも、他人から見たときに「これは瀧さんの100円だ」ということがわからない状況が確保されていること、つまり匿名性があることが大切です前回「意外と知られていないキャッシュレス化の効果と「日銀券」が保証している大切なこと」参照)。

 一方でnanaco、Suicaなどを「電子マネー」と言いますよね。マネー(お金)は、中央銀行が発行するものだとすると、電子マネーの負債者は誰になるのか。たとえばnanacoの場合は発行主体であるセブン・カードサービスです。

 交通系電子マネーとしてはSuica、PASMOなどがあります。Suicaのサイトを見ると「鉄道、バス、お買い物などでご利用いただけるJR東日本のICカード」と書いてあります。でも、Suicaの利用規約を見ると「東日本旅客鉄道株式会社ICカード乗車券取扱規則」となっています。もともとSuicaというのは、2001年に導入されたJR東日本が発行主体のICカードの形態をした「乗車券」なんですね。2004年にショッピングサービス(電子マネー)を開始するまで、Suicaで食べ物や雑誌などを買うことはできませんでした。そのため、Suicaの利用規約は「乗車券」と「電子マネー」の2つに分かれています。規約の名称や構成は異なりますが、PASMOも同様です。

 このように、交通系電子マネーというのは「乗車券」と「電子マネー」の2つを担っているサービスで、法律上は前払い式の支払い手段なんですね。そのためSuicaがいらなくなったとき、手数料(220円)を支払えば、デポジットの500円とともにチャージ残高を払い戻しできます。PASMOの場合は手数料なしでデポジット500円と一緒に残額を返してくれます。一方で、電子マネーの中でもnanacoとかWAONなどは、特殊な場合を除いて払い戻しができない規約となっています。その背景としては、法律に抵触してしまう可能性があるからです。


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著者プロフィール

  • 瀧 俊雄(タキ トシオ)

    マネーフォワード 取締役執行役員、マネーフォワード Fintech 研究所長
    2004年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券株式会社に入社。株式会社野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。スタンフォード大学MBA、野村ホールディングス株式会社の企画部門を経て、2012年より株式会社マネーフォワードの設立に参画。経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」に参加。金融庁「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」メンバー。
  • 慎 芝賢(シン ジヒョン)

    フリーカメラマン 日本大学芸術学部写真学科卒業後、朝日新聞出版写真部勤務。
    2014年フリーカメラマンに。
    雑誌・書籍・新聞・web媒体を中心に撮影を行う。

本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る

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