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「資産運用に裏ワザなし」、あったとしても無理ゲーな世界でとるべき考え方とは

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2019/05/15 12:00

 ロボアドバイザーを提供するウェルスナビの牛山さんは「今は儲けたい人が多すぎるせいで、誰も簡単には儲からない時代」と説明します。では、これから資産運用を始める人はどう考えればいいのでしょう。牛山さんにわかりやすく解説していただきました。

銀行のカウンターで接客できたのは貴重な経験でした

――牛山さんは、ウェルスナビでロボアドバイザー「WealthNavi」の核となる部分、資産運用のアルゴリズムの開発責任者として活躍されています。このお仕事を始めるまでは、どのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。

牛山:私は大学時代にコンピューターサイエンス、特に人工知能を専攻していたのですが、2000年当時は、現在の第三次人工知能ブームの始まる少し前。今のような盛り上がりはまったくありませんでした(笑)。でも、私は人工知能にすごく夢があるなと思っていたので、研究室に入って卒業論文を書きました。ちょうどそのころ、金融工学が注目を集めていて研究者が足りない。面白い学問だからやりませんかというお話があって、大学院の専攻から金融工学に切り替えました。

卒業後は信託銀行に入ったのですが、期待していたほど金融工学を使っていないことに気づきました。資産運用の部署での採用を打診されたのですが、「商品開発をやりたい」と希望を出したら、一般採用に変更になったんです。そうなるとまずは現場からなので、私も銀行の窓口に座っていました。

ウェルスナビ株式会社 執行役員 リサーチ&クオンツ 牛山 史朗(うしやま ふみあき)氏 金融工学の理論に基づく資産運用を誰でも簡単に行えるようにしたいという想いから、2015年12月にウェルスナビに参画。WealthNaviの提供するウェルス・マネジメントの核となる金融アルゴリズムの開発をリードしている。京都大学工学部で人工知能を専攻、京都大学大学院で金融工学を専攻。三菱UFJ信託銀行で個人向けの資産運用アドバイスなどを担当したあと、野村證券にてグローバルな投資戦略の開発などに従事。

ウェルスナビ株式会社 執行役員 リサーチ&クオンツ
牛山 史朗(うしやま ふみあき)氏

金融工学の理論に基づく資産運用を誰でも簡単に行えるようにしたいという想いから、2015年12月に
ウェルスナビに参画。「WealthNavi」が提供するウェルス・マネジメントの核となる金融アルゴリズムの
開発をリードしている。京都大学工学部で人工知能を専攻、京都大学大学院で金融工学を専攻。
三菱UFJ信託銀行で個人向けの資産運用アドバイスなどを担当したあと、野村證券にて
グローバルな投資戦略の開発などに従事。

――牛山さんが窓口に?

牛山:ええ(笑)。カウンターに座ってお客さまをお迎えして、「定期預金の満期なんですけれども」と来られた方の手続きをしたり。支店に2年ぐらいいたのですが、投資の知識がまったくない方とも雑談をしながら仲よくなっていき、その中で投資の話も聞いていただく。現場でそういう経験をすることで、普通の人が投資に対してどういうイメージを持っているかを理解できたのは、今考えるとすごく大きかったなと思います。

そのあと本社に移って希望していた新商品開発に携わったのですが、金融工学バリバリという感じではなかった。それをいちばん使っているところを調べてみると、やはり証券会社なんですね。なので野村證券に移って「クオンツ」という金融工学の専門家が集まる部署で約8年働いていました。

ただ、証券会社で金融工学を使う場合、どちらかというと金融機関がうまく収益を上げるためというのが主目的なんです。金融サービスは働く世代に対してどこまでメリットを提供できているのか。そういう問題意識を持っていたころに、柴山(和久氏、ウェルスナビ代表取締役CEO)がウェルスナビを立ち上げた。それが、2015年4月です。

柴山とはじめて会ったときに、「金融工学を一般の方のために使いませんか」と言われました。働く世代こそ資産運用が必要なのに、彼らに合うサービスが日本にはないんじゃないかという話になり、非常に共感をしまして、ウェルスナビに参画することになったんです。

「クオンツ」という仕事

――牛山さんの仕事は、ウェルスナビが提供するロボアドバイザーの核となる部分を作ること。具体的にはどのようなものなのでしょうか。

牛山:WealthNaviは資産運用を自動で行うわけですが、金融工学の理論に基づくロジックに従って、「こういった資産にこれぐらい投資しよう」という計算が行われ、実際にETFという金融商品を自動で取引する。そのロジックはユーザーからは見えない部分なのですが、アプリの画面でお客さまに何を伝えるかを決めるのにも金融の専門知識が必要です。私自身はロジックだけではなく、サービス全体の設計にもイチから関わっていました。

「クオンツ」というのは簡単に言うと、投資や資産運用の世界に対して科学的なアプローチをする人を指します。昔は、株や投資をする人というのはヤマカンというか、経験でつちかった判断をもとにしていたり、社長の目を見て「この会社なら大丈夫そうだ」と判断するといった世界だったと思います。一方、クオンツがベースにしている理論は1950年くらいに生まれ、急速に発展してきたものです。感覚的に行われていた投資の世界に理論が入ってきた。その理論を自由自在に扱う人間が「クオンツ」と呼ばれるようになりました。

なぜそういう変化が起きたかというと、米国で宇宙開発の予算が削られて、NASAなどのロケットサイエンティストといった科学者が職にあぶれるようになった。その人たちがウォール街になだれ込んで、金融理論をどんどん発展させていったんですね。その中で、理論的にやるほうがきっちり利益も出るし、変な損失を出すリスクも管理することができるようになっていく。同じことはスポーツの世界でも起きていると思います。

ウェルスナビの資産運用アルゴリズム、つまり、何にどのぐらい投資をするかのロジックというのは、柴山がある程度の原型を作っていましたが、サービス立ち上げにあたっては、それを理論に基づき再構築して細かいところまで詰めていく必要がありました。そこで、私のクオンツとしての経験や知識を活かして、アルゴリズムをイチからカチっと作っていきました。


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著者プロフィール

  • 井浦 薫(編集部)(イウラ カオル)

    MONEYzineのロゴ下のキャッチコピーが「投資とお金のこと、もっと身近に」に変わりました。
    これから大きく変化していくこの領域で、注目の人やサービス、テクノロジーを紹介していきたいと思います。ウェブだけでなく、MarkeZine BOOKSの書籍編集も担当しています。

  • 慎 芝賢(シン ジヒョン)

    フリーカメラマン 日本大学芸術学部写真学科卒業後、朝日新聞出版写真部勤務。
    2014年フリーカメラマンに。
    雑誌・書籍・新聞・web媒体を中心に撮影を行う。

本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る

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