相続遺産に占める不動産の割合は4割以上
株式会社ウェルス・パートナー代表取締役の世古口です。プライベートバンカーとして顧客の資産運用や相続のサポートをしてきた経験を活かして、この連載では多くの方に知ってほしい相続についての基礎知識を解説したいと思います。
プライベートバンキングサービスは主に「保有資産10億円以上」の方向けに提供されるものです。相続争いというと一部の富裕層だけの問題で自分には関係ないと思いがちですが、さまざまなご相談を受けるなかで実感したのは、富裕層より資産総額は少ない場合でも、相続争いが起きることです。むしろ、そのくらいの資産のほうがもめることが多いかもしれません。
なぜなら、一般的な保有資産水準にある人ほど、その資産に占める不動産の割合が大きくなるからです。以下のグラフは国税庁が2018年の12月に発表した、相続財産の金額の構成比の推移をまとめたもの。土地の割合は年々低下しているとはいえ、土地と家屋が占める割合は4割以上あります。土地が減っている分、増えているのは「現金・預貯金等」で、「有価証券」も微増しています。

前回の記事でお伝えしたように、不動産は共有しないほうが良い資産です。しかし、子供が2名以上いる場合は、相続が起こった場合に共有にならざるを得ませんし、そうならなければ不公平ということになります。
地方における土地・建物の「流動性」
地方出身で就職のために東京や大阪など都市部に住んでいる方は多いと思います。私も仕事のために東京に住んでいますが、三重県出身で親は今も三重の実家に住んでいます。
ではなぜ、親が田舎に土地や自宅を所有していることは、相続の際に要注意になるのでしょうか。
田舎の土地や自宅は都市部の建物と比較して「流動性が低い」からです。都市部は多くの需要があり、不動産を売却し現金化しやすい。一方で私の地元、三重県など地方の都市の土地や自宅は、すぐには売却できないことが多いと思います。もしくはすぐ売却するためには、かなり安値で売らなければならなくなる可能性があります。この田舎の土地や建物の流動性の低さが、相続の問題を複雑化させるのです。
そして不動産と同様に注意しなければならないのが「遺留分」です。遺留分とは簡単にいうと相続人の最低限の取り分のことで、遺言があっても法定相続分の1/2は資産を承継できる権利です。この遺留分を請求することを「遺留分侵害請求」と言います。
続いては、当社のお客様で、不動産と遺留分により相続争いが複雑化した事例を紹介します。