MONEYzine(マネージン)

テーマ別に探す

クラウド会計のfreeeが上場、海外投資家が7割の「グローバルIPO」に

  • ブックマーク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2019/12/18 08:00

 クラウド会計サービスを提供するfreeeが、東京証券取引所マザーズへ新規上場した。120億円を調達した今回のIPOで、同社はSaaSビジネスを理解している海外投資家に積極的にマーケティングを行なっていた。

「統合型クラウドERP」で中小企業を支援してきたfreee

 freeeは12月17日、東京証券取引所マザーズへ新規上場した。同社CEO 佐々木大輔氏は一橋大学商学部卒。博報堂、投資ファンドのアナリスト、レコメンドエンジンのスタートアップALBERTのCFOを経て、Googleで日本およびアジア・パシフィック地域での中小企業向けマーケティングチームを統括した後、2012年にCTOの横路隆氏とfreeeを創業した。

 同社はスモールビジネス、いわゆる中小企業向けに「会計freee」をはじめとして「人事労務freee」「申告freee」など、バックオフィスの業務を効率化するサービスを複数提供している。同社はこれらを「統合型クラウドERP」と定義しており、佐々木氏は「会社としてやらなければいけない日々の業務をfreeeの上で回していくと、会計帳簿ができる仕組み」と説明する。

 従来の会計ソフトとの違いは、単に会計帳簿をデジタル化するだけではないところ。freeeを使って請求書を作成すると、その内容が自動で帳簿に反映される。インターネットバンキングを利用すると請求書と銀行明細が連動し、消し込み作業が効率化される。中小企業の多様な業務を「統合型」でカバーすることによって、freeeは業務の自動化を促進し、働き方を変えていくプラットフォームとして機能する。

SaaSビジネスとしてのfreee

 freeeのように「会計」「給与」などの機能をパッケージソフトウェアではなく、インターネットを介したサービスとして提供するビジネスは、「SaaS(Software as a Service)」と呼ばれる。また、同社のサービスは月額課金のため、顧客と長期的な関係を構築することがベースとなるサブスクリプションモデルとなる。

 有料課金ユーザー企業数(件)は、2015年6月期第4四半期末の29,392件から、2020年6月期第1四半期末には161,904件に成長。ARR(Annual Recurring Revenue)は、2020年6月期第1四半期に57億7,400万円と、年平均約2倍の成長を見せている。

新規上場申請のための有価証券報告書より
新規上場申請のための有価証券報告書より

 このビジネスモデルでは、顧客を獲得するコスト(Customer Acquisition Cost、CAC)を1ユーザーあたりのMRR(Monthly Recurring Revenue)で回収し、累積の収益を上げていく形になる。LTV(Life Time Value)と呼ばれる顧客の生涯価値とCACを比較し、顧客ごとの売上の成長を見ながら経営していく典型的なSaaSモデルとなっている。

 またSaaSでは、ユーザー企業がサービスにログインしてどのように活用しているかをデータを通じて把握できるため、顧客満足度を上げるためのアプローチを様々に展開していくことができる。freeeでは特に業務における手入力などの削減をKPIとして改善を行なっているという。

 SaaSのパイオニアのひとつである米Salesforce.comは、自社サービスを中心に顧客だけでなく、様々なパートナーとつながり、新たなビジネスチャンスを生み出すことによって巨大なエコシステムを構築。その中から生まれた新興企業も多い。freeeもアプリストアを運営することで顧客の利便性を向上し、多くの企業とつながる環境を提供している。

 今後は蓄積しているデータを活用し、融資を含めた金融事業を展開。将来的には人工知能CFO、AIに意思決定を任せられる環境を作っていく構想もあるという。

7割が海外投資家のグローバルIPO

 freeeは今回のIPOで約120億円を調達した。佐々木氏が強調したのは、海外比率が70%というグローバルIPOであるということ。「日本における今年初のグローバルIPOであり、日本のSaaS業界初」だとして、SaaS業界も盛り上がっていくのではないかと語る。

 記者発表会に佐々木氏と登壇した同社取締役 CFOの東後澄人氏は、2018年末から北米を中心に海外の投資家と接触する中で、SaaSを理解している投資家の存在を実感。良いパートナーになれると感じたという。

 一方、同社が12月17日に発表した2020年6月期連結の予想は、売上高69億4,100万円、営業損失28億7,600万円、経常損失31億2,700万円、親会社株主に帰属する当期(四半期)純損失31億3,500万円、1株当たり当期(四半期)純損失76円10銭、1株当たり配当金0円00銭となっている。

 収益化を実現する時期については明言を避けたが、顧客1社当たりの収益性(ユニットエコノミクス)を重視し、顧客獲得コストに対してどれだけLTVが得られるか、それが担保できれば積極的に投資していきたいとしている。

 2023年10月1日からは「適格請求書等保存方式」、いわゆるインボイス制度が導入される。軽減税率制度がスタートし、複数税率制度のもとで適正な課税を確保するために導入されるこの制度が、中小企業の負担を増すのではないかと懸念されている。

 中小企業における経営課題を直接的に解決するプラットフォームへの進化を目指すfreeeは、その実現のために、調達した資金を営業・マーケティング、サービス開発に投資していく。

【関連記事】
会計freee API経由で新たに31種類の操作が可能に
freee、「AI月次監査」で機械学習による勘定科目エラー検知に対応
マネーフォワード、SaaSメディア「ボクシル」のスマートキャンプを子会社化、マーケティング領域へ事業拡大

  • ブックマーク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連リンク


All contents copyright © 2007-2020 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5