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テレワークでもできる決算のポイント

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2020/06/01 12:00

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で決算発表を延期する企業が増えています。関係者が在宅で準備を進め、4月に決算発表を行ったマネーフォワードの松岡 俊氏に、テレワーク環境下における決算業務についてうかがいました。

企業における「会計」「経理」の役割

――松岡さんはずっと財務・経理畑を歩んでこられましたが、2019年にマネーフォワードに参画されたきっかけは何だったのでしょうか。

松岡:私は1998年にソニーに入社して、会計のシステム周りのプロジェクトを担当していました。私が入社3年目くらいのときに、マネーフォワード代表の辻(庸介氏)がソニーに入社し、同じ部署になったりしていろんな仕事を一緒にやってきました。私はその後、イギリスに5年ほど赴任し、アメリカにもリモートで部下が2名いるという環境で仕事をしていました。

 辻もMBAを取得するためにアメリカに行っていてお互いに連絡することがなかったのですが、2019年頃に突然Facebookで連絡が来て、4月にマネーフォワードに入社することになりました。

松岡 俊氏マネーフォワード執行役員 財務経理本部 本部長1998年早稲田大学政治経済学部卒業、同年ソニー株式会社入社。各種会計・税務業務に従事し、決算早期化、基幹システムプロジェクト等に携わる。在職中に、税理士試験および公認会計士試験に合格。2012年以降は、イギリスにおいて約5年間にわたる海外勤務経験を持つ。帰国後は各種新規会計基準対応に従事。2019年4月よりマネーフォワード財務経理共同本部長として参画。
松岡 俊氏
マネーフォワード執行役員 財務経理本部 本部長

1998年早稲田大学政治経済学部卒業、同年ソニー株式会社入社。
各種会計・税務業務に従事し、決算早期化、基幹システムプロジェクト等に携わる。
在職中に、税理士試験および公認会計士試験に合格。
2012年以降は、イギリスにおいて約5年間にわたる海外勤務経験を持つ。
帰国後は各種新規会計基準対応に従事。
2019年4月よりマネーフォワード財務経理共同本部長として参画。

――海外でのご経験もある松岡さんに、今回は日本企業の決算業務のあり方についてうかがっていきたいと思います。その前に、会社にとっての「会計」「経理」の役割についてあらためてお聞きしたいです。

松岡:「アカウンタビリティ(Accountability:説明責任)」という言葉にあるように、「会計」というのは「Accounting」、つまり企業として投資家、株主、債権者に説明責任を果たすためのツールです。

 マネーフォワードのようなSaaSビジネスというのは非常にサイクルが早いので、伝統的な会計の指標だけではなく、ARPA(Average Revenue Per Account:顧客平均収益)とかChurn Rate(解約率)といった指標をKPIとして追っています。投資家もそういう非財務情報に関心を持っていますが、それらを追った結果が会計の数字につながってくるので、最終的に投資家はそこを見ていると思います。

 もう一方の「経理」というのは、そういう数値を経営者および投資家にできるだけ早く届けることが求められます。

――現在では、そうした業務を紙ベースで行う会社もあれば、DXを推進して電子化している会社もあると思います。また、コロナの影響によってリモートで業務を行うという選択肢も出てきました。

松岡:私はいずれの環境も経験しているのですが、紙ベースというのは、経理担当者から経理上長への一連のコミュニケーションの中で、紙の書類を使っていわば「スタンプラリー」をやっている状態と言えます。紙というのは「一覧性が高い」というメリットがあります。たとえば、申告書の数字を確認する際に、それぞれの数字が複数の資料から来ている場合には、机の上にそれらの書類を広げたほうが見やすいのです。

 デメリットとしては、書類の回覧は関係者がオフィスにいないとできないことと、回覧されるまでの時間のロスですね。上長がいないので承認できないということはよくあると思いますが、クラウド環境においては電子的に書類が回覧できるので、上長が出張中でも承認できます。とはいえ、クラウド環境下においても電話やFAXを使ったやり取りは発生するので、それらをデジタル化する作業を行って、電子で回覧していくかたちになります。

 最後にテレワーク環境ですが、クラウド環境で可能なことはリモートになっても変わりません。自宅からまるでオフィスにいるかのように作業ができます。ただし、電話やFAXについては誰かが会社に来て処理しないといけないので、そこでの工夫は必要になります。

海外と日本では経理に対する考え方が違う

――日本では、コロナ対策でテレワークが推奨される中で、紙とはんこによる業務フローの問題が指摘されています。松岡さんはイギリスでも勤務のご経験がありますが、日本企業の業務における課題についてはどのようにお考えですか。

松岡:私の海外経験が一般化できるかは不明なので参考までにお話ししますが、欧米でもはんこの代わりにサインをします。でもそれは外部との契約の際に行うもので、内部承認に関しては積極的に電子化している印象があります。しかし日本は社内であっても紙に印刷してはんこを押すという根強い文化があるように思います。

 なぜそうしているのかを考えると、日本のほうが「綿密にチェックしたい」という気持ちが強いのではないでしょうか。だから紙で印刷して、細かいところまでひとつひとつ見ていくほうがやりやすいということになっているのだと思います。また、社内であってもはんこに対する心理的安心感はあるのかと思います。

――現場の一社員からすると、社内外を問わず紙の書類を使うのが「正式な手続き」であって、そうでないものは仕事のやり方として間違っている、あるいは法的根拠がないように感じてしまうのですが。

松岡:この場合、社内か社外かで分けて考えたほうがいいですね。担当者と上長の関係というのは、会社と会社の間の法律的な関係とは違うものです。取引先に請求書を郵送するときに社印を押すことによって法律的な意味が生まれることと、社内承認を得るための手続きを同等に考える必要はありません。

 日本と海外の違いに話を戻しますと、日本は細かいところも含めて100点を目指そうとする傾向があるように思います。正確性重視ですね。紙で伝票を印刷して、証憑(取引成立を証明する書類)をすべて添付して、伝票はひとつひとつ細かいところまで複数名でチェックする。だから経理部門は決算前は終電まで仕事をすることが多いし、有給休暇をすべて取得することも少ないと言われています。

 一方、海外の経理部門は効率性を重視する印象があります。伝票の細かいエラーをつぶすことより、大きな流れでエラーがないかを分析的に確認することを重視しており、外部へのBPO(Business Process Outsourcing)も積極的です。経理に限らず、海外では業務を標準化して、自動化して、効率的にやって、早く帰りましょうという考え方なのではないでしょうか。実際、月次決算中でも経理部門は定時で帰っている人が多いですし、有給休暇は100%消費すべきという考え方が浸透しています。


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著者プロフィール

  • 井浦 薫(編集部)(イウラ カオル)

    MONEYzineのロゴ下のキャッチコピーが「投資とお金のこと、もっと身近に」に変わりました。
    これから大きく変化していくこの領域で、注目の人やサービス、テクノロジーを紹介していきたいと思います。ウェブだけでなく、MarkeZine BOOKSの書籍編集も担当しています。

本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る

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