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大企業の2割に「再入社制度」あり、辞めた社員とのつながりがもたらす経済効果とは?

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2020/06/04 17:15

 「辞めた人は出入り禁止」、そんな考え方も変わりつつあるようだ。パーソル総合研究所は、会社を卒業していった社員がもたらす経済効果と、再入社制度についての調査結果を発表した。

離職者がもたらす経済効果

 パーソル総合研究所は5月29日、企業のアルムナイ(離職者とのつながり)に関する調査結果を発表した。「alumni(アルムナイ)」は、卒業生や元社員という意味。この調査でいう「元在籍企業」とは、現在よりひとつ前に在籍していた企業を指す。

 同社は、離職後に「元在籍企業」や「元同僚」と行った経済的取引の範囲を「アルムナイ経済圏」(※1)と定義し、その市場規模(※2)を推計。推計の結果、アルムナイ経済圏の規模は年間1兆1,500億円。また、アルムナイ経済圏のうち「元同僚」との取引を除き、「元在籍企業」との取引に限定した「狭義のアルムナイ経済圏」の規模は、年間4,400億円となった。

 この調査では、「購入者」「評価者」としての離職者について調査している。離職者が個人ユーザーとして、元在籍した企業の商品・サービスを1年のうちに利用・購買している割合は10.8%。離職者が元在籍企業の商品・サービスを勧めるかどうかを見ると、ポジティブな説明が12.5%、ネガティブな説明が13.2%とおおむね拮抗する結果となった。

 元在籍企業への入社を人に勧めるかどうかを見ると、ポジティブな紹介が4.0%、ネガティブな紹介が4.3%と、こちらもほぼ拮抗している。 しかし、会社のクチコミサイトでは、ポジティブな書き込み4.8%、ネガティブな書き込み35.6%と、圧倒的にネガティブな書き込みが多くなっている。

 また、元在籍企業と良好な関係を築いている離職者(アルムナイ意識が高い層)では、ポジティブな評判を広めやすく、元在籍企業との取引・利用が起こりやすいことも確認できた。

離職した企業への再入社

 この調査では、離職後に再入社できる公式な制度(再入社制度)についてもたずねている。再入社制度を設けている企業は8.6%。従業員5,000人以上の企業では20.2%と、従業規模が大きい企業ほど整備されている。

 離職した企業への再入社の意向をみると、再入社したい人は8.3%。実際に過去5年以内に再入社した人は約2.1%だった。再入社した人のうち、公式な再入社制度を利用したのは4.0%。整備は徐々に進んできているものの、現状では再入社者の75.7%が人づて・縁故などの非公式なルートで再入社していることがわかった。

 再入社者のメリットとして、「仕事内容が事前にイメージできた」42.7%、「組織内のキーパーソンが理解できている」37.7%など、比較的スムーズに業務を進められる様子がうかがえる。

 再入社後の満足度は総じて離職時よりも高まっているが、「給与・報酬・評価への満足度」だけは離職時より微減となっている。背景として、離職時と再入社後の処遇を比較すると、大企業(従業員1,000人以上)では 「年収低下」32.9%や「職位低下」17.7%など、再入社者を低く処遇する傾向がみられることが考えられる。

 パーソル総合研究所では、コロナ禍の前から大手企業を中心に「自らの組織を離れた従業員」との関係性のあり方を見直す動きが活発化していると指摘。企業を去った従業員をぞんざいに扱ってしまえば、企業ブランディングは大きく毀損するし、逆に、良好な関係を築ければメリットが大きい。人口減少社会である日本では、こうした「離職者との良好な関係の継続」はますます重要になってくると分析している。

 また、見逃されがちだが、退職時の面談の影響力は大きいという。上司面談において、単に退職意思を尊重するだけでは、離職者心理にネガティブな影響を与えてしまう。その人の思いをどう引き出すか、細やかなコミュニケーションが離職者との長い信頼関係を築くための分かれ道となりそうだ。

※1 アルムナイ経済圏:離職後、「元在籍企業」や「元同僚」と行った経済的取引の範囲を「アルムナイ経済圏」と定義し、以下の3つの合計値を意味する。

1. 元在籍した企業と現在在籍中の企業との取引(B2B)
2. 元在籍企業と離職者個人との取引(B2C)
3. 元在籍企業で同僚だった者との取引(B2B並びにB2C)

※2 アルムナイ経済圏の市場規模の推計:「年間の離職者数(パートタイム除く一般労働者)」から「非自発的な離職(事務所側の理由・定年など)を除き、「離職者一人当たりの年間取引額」をかけて求めている。

【調査概要】
調査手法調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査時期2019年12月20日-24日
調査対象者 〈共通条件〉
居住地域:全国 年齢:20歳以上50歳未満
・企業規模:10人以上 / 公務員・士業、第一次産業は除く / 資本:内資・外資不問
合計サンプル数 2300人
・離職者2000人 5年以内に離職経験者:性年代ごとに250サンプルずつ回収
・再入社者300人 5年以内に出戻り入社の経験者(割付なし)
・当時の役職不問 在職期間3か月以上
※離職者の現在の雇用形態・就業状態は不問
実施主体パーソル総合研究所

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