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日本銀行が示した「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」への取組方針、「現金と共存・補完するもの」

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2020/10/13 11:00

中央銀行デジタル通貨とは

 日本銀行は10月9日、「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を発表。「中央銀行デジタル通貨」(Central Bank Digital Currency:以下「CBDC」)について、現時点で発行計画はないとしながらも、今後の環境変化に対応できるよう準備するとしている。そのうえで、個人や企業を含む幅広い主体の利用を想定した「一般利用型CBDC」について、日本銀行の取り組み方針を発表した。日本銀行の発表資料をもとに、その内容を見ていこう。

 CBDCは、民間銀行が中央銀行に保有する当座預金とは異なる、新たな形態の電子的な中央銀行マネーである。CBDCは中央銀行の負債であり、決済の手段として用いられる。また、当該国の法定通貨建てで発行されることを通じて価値尺度として機能する。

出典:「取り組み方針のポイント」(日本銀行)

出典:「取り組み方針のポイント」(日本銀行)

 CBDCには大きくふたつの形態がある。

・ホールセール型CBDC
・一般利用型CBDC

ホールセール型CBDC

 ホールセール型CBDCは、金融機関間の大口の資金決済に利用することを主な目的として、中央銀行から一部の取引先に提供される。これは、利用者を一部の先に限定した電子的な中央銀行マネーという点で、民間銀行が中央銀行に保有する当座預金と共通している。

 ホールセール型CBDCについては、分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology:DLT)を活用することで、証券取引やデリバティブ取引の決済の効率性を向上させ得るとの指摘がある。

一般利用型CBDC

 一般利用型CBDCは、個人や一般企業を含む幅広い主体の利用を想定したもので、現在の現金通貨(銀行券および貨幣)と同様の機能を有するもの。ユーザーは、場所や時間を問わず、スマートフォンやICカードなどを用いて、中央銀行から発行された通貨を日々の買い物などに使用することが可能となる。

 このほか、企業間の資金取引や金融機関間の金融取引を、一般利用型CBDCを用いて行うことも考えられる。この場合は、民間金融機関が発行する預金通貨の機能を補完するものと位置付けられる。

 今回、日本銀行が示したのは、上記2つのCDBCのうち「一般利用型CBDC」についての取り組み方針である。

 最近では、多くの中央銀行が一般利用型CBDCに関する検討を進めているが、その背景は各国の状況によって異なっている。日本では現金流通高の対名目GDP比率が20%程度と高いことなどから、一般利用型CBDCを導入する必要性は当面生じないとの見方も少なくないが、仮に将来、現金の流通が大きく減少する場合には、CBDCの発行により、これを埋め合わせることが必要となる可能性がある。また、そうした事態が生じない場合でも、日本の決済システムをより良いものとしていく観点から、CBDCの発行が望ましいと判断されることがあり得るとしている。

 その一方で、日本ではクリーンで偽札も少ない銀行券に対して高い信頼が寄せられてきたことから、今後も現金に対する需要がある限り、日本銀行は現金の供給についても責任をもって続けていくとしている。またその意味で、CBDCは現金を代替するものではなく、現金と共存し、これを補完するものと位置付けられるとしている。

日本で一般利用型CDBCを導入する場合に期待される機能や役割

 日本で一般利用型CBDCを導入する場合に期待される機能や役割を整理すると、以下のようになる。

(1)現金と並ぶ決済手段の導入
当面、現金の流通が大きく減少する可能性は高くないが、仮に将来、そうした状況が生じ、一方で民間のデジタルマネーが現金の持つ機能を十分に代替できない場合には、現金と並ぶ決済手段として、一般利用型CBDCを提供することが考えられる。

(2)民間決済サービスのサポート
(1)は、現金の流通が減少するケースを念頭に置いているが、そうした事態が生じない場合でも、決済システム全体の安定性・効率性を高める観点から必要であれば、民間決済サービスをサポートするためにCBDCを発行することが適切となる可能性がある。

(3)デジタル社会にふさわしい決済システムの構築
(1)(2)に加え、より広い観点から、日本銀行がCBDCを発行したうえで、民間事業者の創意工夫により様々なサービスを上乗せして提供することなどが、デジタル社会にふさわしい安定的・効率的な決済システムの構築につながる可能性も考えられる。

一般利用型CBDCの発行形態と基本的特性

 現在、日本銀行は、銀行などに対して日本銀行当座預金を決済手段として提供し、銀行は企業や個人に対し、銀行預金を通じて決済サービスを提供している。また、日本銀行は、日本銀行当座預金と引き替えに、銀行に対して現金を供給し、銀行は、銀行預金と引き替えに、企業や個人に対して現金を供給している。

 今回発表された方針では、一般利用型CBDCを発行する場合も、こうした中央銀行と民間部門の二層構造を維持することが適当であるとしている。すなわち「間接型」の発行形態が基本となる。

出典:「取り組み方針のポイント」(日本銀行)

出典:「取り組み方針のポイント」(日本銀行)

 これは、日本銀行が、CBDCというファイナリティのある中央銀行マネーを発行し、全体的な枠組みを管理するとともに、銀行などの仲介機関が、その知見やイノベーションを通じて利用者とのインターフェース部分の改善に取り組むことが、決済システム全体の安定性・効率性の向上につながると考えられるためである。

 間接型の発行形態のもとで一般利用型CBDCを発行する場合には、機能面やシステム面で、以下のような基本的特性を具備する必要があると考えられる。

(1)ユニバーサルアクセス
(2)セキュリティ
(3)強靭性
(4)即時決済性
(5)相互運用性

今後の取り組み方針

 日本銀行は数年前から、CBDCに関する調査研究や実験に取り組んでおり、2020年7月には実証実験の実施を含め、検討のステージを引き上げるため、決済機構局内にデジタル通貨グループを発足させている。

 また、7月に決定された政府の「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太方針2020)においても、「CBDCについては、日本銀行において技術的な検証を狙いとした実証実験を行うなど、各国と連携しつつ検討を行う」とされていることから、日本銀行は今後も環境変化に的確に対応できるよう準備を進めていく方針で、現時点で3つの予定を明らかにしている。

(1)実証実験
(2)制度設計面の検討
(3)内外関係者との連携

 このうち実証実験では、民間部門の先端的な技術やノウハウを活用していくことが不可欠として、以下のように段階的、計画的に進めていく。まず「概念実証」(Proof of Concept)のプロセスを通じて、CBDCの基本的な機能(発行、流通(送金)、還収)や備えるべき特性が技術的に実現可能かどうかを検証する。そのうえで必要と判断されれば、パイロット実験の要否を検討する。

出典:「取り組み方針のポイント」(日本銀行)

出典:「取り組み方針のポイント」(日本銀行)

 考慮すべきポイントとして上の図にあるように4点挙げているが、このうち、物価の安定や金融システムの安定との関係については、次のような見解を示した。

 「通貨供給の二層構造」のもとで、CBDCを現在の銀行券と同じく、中央銀行預け金との交換によって生じる日本銀行の直接の負債と位置付けるのであれば、中央銀行マネー(マネタリーベース)と銀行預金の関係はこれまでと同様である。また、CBDCの発行自体が、直ちに民間銀行の信用創造機能に影響を及ぼすことにはならない。

 一方、CBDCの発行により、銀行預金からCBDCへの大幅な資金シフトが生じれば、民間銀行の金融仲介機能に影響を及ぼすことになる。たとえば、銀行預金よりもCBDCの利便性が高くなると、銀行預金は大きく減少してしまい、そのことを通じて銀行の信用創造が抑制されるとの指摘がある。こうした点は、金融政策の効果波及ルートに対する影響という点でも注意を要する。

 安定的・効率的な決済システムは、日々の生活に不可欠なインフラであるのと同時に、日本銀行が、物価の安定と金融システムの安定という目的を実現するための政策的な基盤でもある。金融政策の有効性や金融システムの安定性の観点から、CBDCの機能要件や経済的な設計(発行額・保有額の制限や付利の有無など)については慎重な考慮が必要であるとしている。

【編集部より、タイトルの修正について】
ニュースのタイトルのカッコ内が「CDBC」となっていましたが、2020年10月28日に「CBDC」に修正しました。

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