新婚夫婦の生活支援などを補助する制度に「結婚新生活支援事業(結婚助成金)」がある。少子化対策の一環として、平成30年度に導入された。支援事業では、新婚世帯を対象に家賃や引越費用などが補助され、補助金の上限は1世帯当たり30万円。支援事業を実施する地方自治体を対象に、国が地方自治体による支援額の一部を補助している。
対象世帯:夫婦共に婚姻日における年齢が34歳以下かつ世帯所得340万円未満の新規に婚姻した世帯(ただし奨学金を返還している世帯は、奨学金の年間返済額を世帯所得から控除)
補助対象:婚姻に伴う住宅取得費用または住宅賃借費用、引越費用
補助率: 1/2 ●補助上限額:1世帯あたり30万円(国が15万円補助)
上記が支援事業の概要だが、対象世帯、補助対象、補助上限額は、地域の実情に応じて上乗せ・縮小が可能となっている。

先日、この結婚新生活支援事業の補助金について、政府が60万円に倍増させる方針を示したことで話題になった。しかし、補助金そのものや受け取れる対象者についてはあまり知られていないようだ。
まず、補助金をもらえるのは結婚新生活支援事業を実施している地域に住み、新たに婚姻届けを提出した夫婦に限られる。しかし、内閣府が公表している資料によると、2020年11月1日現在で交付が決定している市区町村は289となっている。

例えば、神奈川県では松田町、湯河原町、愛川町、清川村の4町村、埼玉県では鴻巣市、小川町、横瀬町、長瀞町、美里町の5市町、千葉県では千葉市、野田市、佐倉市、市原市、四街道市、山武市、いすみ市、栄町、横芝光町、長生村、白子町、鋸南町の12市町村、大阪府では枚方市、泉佐野市、和泉市、藤井寺市、岬町、太子町の6市町に住んでいる人に限られている。東京都や福井県、広島県では選定された市町村はない。
さらに、補助金をもらうには、各自治体から提示されている条件を満たす必要がある。千葉県千葉市の結婚新生活支援事業を見ると、結婚を機に千葉市へ転入する新婚世帯が対象で、2019年分の夫婦の合計所得が340万円未満、夫婦双方の年齢が34歳以下、入居対象の住居の専有面積が最低居住面積水準(2人世帯の場合30平方メートル以上)であることなどの条件がある。当初は、令和2年1月1日~令和3年2月26日までの間に婚姻届を提出し、受理された夫婦を対象としていが、予算額(予定件数30件)に達したため、令和2年度の申請受付はすでに終了している。
大阪府枚方市は千葉市よりも若干ハードルが低く、2019年分の夫婦の合計所得が400万円未満、夫婦双方の年齢が39歳以下などとなっている。
そんな中、結婚式のチャット相談サービスを提供しているプラコレウェディングは、20代から30代の女性1,373名を対象に「結婚新生活支援事業費補助金」に関する実態調査を実施した(調査期間:2020年10月25日~10月27日)。
調査結果によると、助成金があることを知っていた女性は全体の13%にとどまった。また、助成金について知った時期について聞くと(n=1,004名)、「最近ニュースやネットで存在を知った」が187名、「自身が結婚するときに調べた」が80名、「前から知っていた」が70名。「知らなかった」が667名で最も多かった。

助成金に関する意見や考えを具体的に聞くと、「対象地域でもなく、世帯年収も対象外で、誰が受け取れるのだろうという印象」「世帯年収の設定が低すぎて共働きだと貰えない」「対象の市町村が少なすぎてぬか喜びだった。全自治体や国レベルでやってほしい」などのコメントが寄せられた。
結婚新生活支援事業で実質的な効果を期待するには、対象地域の拡大や受給要件の緩和だけでなく、いかに必要な人に情報を届けるかといったコミュニケーション施策から検討する必要がありそうだ。
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