大統領選挙後の株価の変化に注目
GAFAやFANGなどと呼ばれる大手IT企業が長く米国株式市場をけん引してきました。これらの銘柄群はグロース(成長)株と呼ばれます。しかし、11月の大統領選挙を過ぎたあたりからその勢いに陰りが見え始めています。グロース株の株価が低迷する中で逆に騰勢を強めているのがバリュー(割安)株です。もしかすると相場は大きな転換点を迎えているのかもしれません。
「グロース株」「バリュー株」とは?
グロース株とは将来の成長性が期待される銘柄であり、売買を伴う人気銘柄となることがあります。また、EPS(1株当たり利益)やPBR(株価純資産倍率)などで見ると割高なケースが多いのが特徴です。バリュー株とはEPSやPBRなどで見た場合にグロース株と比べて相対的に割安とされる銘柄です。長期的にはグロース株が優位な相場とバリュー株が優位な相場があるとされ、グロース株やバリュー株で構成された株価指数によってその動向を見ることができます。

このような株価指数はスタイルインデックスと呼ばれており、運用を行う際のパフォーマンス評価のベンチマークとして利用されています。たとえば、グロース株で運用を行っているファンドがあったとして、そのファンドの運用成績が市場全体と比較してどうだったかを測るのは必ずしも合理的ではありません。仮に市場全体よりもパフォーマンスが良かったとしても、単純にグロース株が優位な相場環境だったから、という可能性もあるからです。そこで、グロースやバリュー、大型・中型・小型などの観点で作られたスタイルインデックスとの比較で、ファンドのパフォーマンスが良かったのか、悪かったのかを判断するという用いられ方をします。
米国にはラッセル1000指数という大型株で構成された株価指数があります。この株価指数のスタイルインデックスとして、グロース株で構成されるラッセル1000グロース指数、バリュー株で構成されるラッセル1000バリュー指数があります。10月末時点でラッセル1000グロース指数の上位構成銘柄は、アップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、アルファベットであり、対してラッセル1000バリュー指数の上位構成銘柄はバークシャー・ハサウェイ、JPモルガン・チェース、ジョンソン&ジョンソン、ウォルト・ディズニー、ベライゾン・コミュニケーションズとなっています。
図1は1995年5月から2020年11月(11月は18日まで)の各指数の推移です。

グロース株とバリュー株のパフォーマンス比較
最近の米国株式市場では、ダウ平均が堅調であってもナスダック指数が下げているということがありました。ナスダック指数にはハイテク関連のグロース株が多いので、ナスダック指数の下落はグロース株が売られているということに他なりません。
図1からもこれまでの相場がグロース株優位となっていたのは明らかですが、さらに同じ期間でラッセル1000グロース指数とラッセル1000バリュー指数それぞれについて、ラッセル1000指数を上回る超過収益率を計算し、1995年5月末を100として累積指数化したのが図2です。

ラッセル1000グロース指数がラッセル1000指数を超過する傾向にあった時期をグロース株優位、ラッセル1000バリュー指数がラッセル1000指数を超過する傾向にあった時期をバリュー株優位とすると、2000年まではグロース株優位、2000年から2007年まではバリュー株優位、2007年から現在に至るまでグロース株優位となっています。
特に(トランプ大統領が就任した)2017年以降はグロース株優位の傾向は一段と強くなっており、2020年8月までにパフォーマンス差は過去最大に拡大しています。一方で、2020年秋以降、両者のパフォーマンス差は縮小してきています。もしかするとグロース株優位の相場からバリュー株優位の相場へと転換をしたのかもしれません。
また、図2からはグロース株優位とバリュー株優位の転換が発生すると、その後、相場全体が大きく下落していたことも分かります。仮に前述の通り、グロース株優位の相場からバリュー株優位の相場への転換が起こっているとすれば、今後は相場全体が大きく下落する可能性も否定できません。