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拡大するファクタリング市場と5つのメリット、「偽装ファクタリング」などへの注意点を徹底解説

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2020/12/21 12:00

 中小企業の資金調達手段として注目されている「ファクタリング」の仕組みを、マネーフォワードケッサイ取締役会長の家田 明氏がわかりやすく解説。さらに、悪質業者による「偽装ファクタリング」「給与ファクタリング」の手法についても説明します。

世界的なファクタリング市場の拡大

 前回は、中小企業の運転資金は、金融機関からの融資だけではまかない切れていないことや、金融機関から融資を受けるには様々な障害があることを説明したうえで、最近は中小企業の資金調達手段としてのオンライン型のファクタリングの有用性が注目されていることを紹介した。今回は、ファクタリングの具体的な仕組みや資金調達手段としての有用性などを解説する。

 ファクタリングには一般にいくつかの類型があるが、前回と同様に、ファクタリングとは、企業が持つ売掛債権をファクタリング会社に手数料を支払って期日前に売却することで、企業が資金調達を行えるサービスのことを指すことにする。

 ファクタリングは、元々は欧米で古くから行われている金融取引の一形態である。ここで、国際的な市場の規模をみておきたい。ファクタリング業者の国際団体であるFCI(Factors Chain International)の統計を使って、2019年の日本と欧米主要国におけるファクタリング取扱高(Factoring Turnover)を比較する。

 この統計はFCIのメンバーとなっているファクタリング業者のみの取扱高であるが、市場の現況を知るためには有益な統計である。これを見ると、欧米、特に欧州主要国におけるファクタリング取扱高は日本のそれの5倍から7倍程度になっており、ファクタリングがかなり活用されていることがわかる。逆にいえば、これら欧州主要国より大きな経済規模を有するわが国にとっては、ファクタリング市場が一層拡大する余地が相当大きいことになる。

日本における資金調達をめぐる環境の変化

 日本にファクタリングが導入されたのは、銀行系などのファクタリング業者が設立された1970年代にさかのぼる。しかし、上述の統計からもわかるように、わが国におけるファクタリング取引は一国の経済規模に比べれば必ずしも盛んなものではないまま推移してきた。

 この背景には、いくつかの要因が存在する。ここでは2点をあげる。第1に、日本では商慣習として約束手形が広く用いられてきたことがある。企業は金融機関等で手形を割り引くことで資金を調達することが可能であり、実際に主要な資金調達手段として位置付けられてきた。第2に、売掛債権を売却すること自体が当該企業の資金繰りや経営状態の悪化を示すとみなされること、つまり風評被害への懸念があったことが挙げられる。この懸念のため、企業は売掛債権の売却を躊躇してきたのである。

 こうした各種要因から、わが国においてはファクタリング取引の広がりが限定されてきたわけであるが、上記の2点に関して以下のように状況が変化してきている。第1点の約束手形については、近年、手形に関する各種コストの高さやインターネットバンキングといった資金決済手段の広がりなどから取扱高が大きく減っている。このため、手形割引による資金調達が行いにくくなっている。

 第2点の風評被害への懸念については、国(経済産業省)が売掛債権を利用した中小企業の資金調達の促進を政策として進めてきた。最近でも、2020年4月の債権法の改正に伴い、債権譲渡禁止特約は債権譲渡の妨げにならないことが明記された。こうした動きに伴い、売掛債権の売却に関する風評被害への懸念が徐々に薄れてきていると考えられる。こうした状況の変化もあって、足元ではファクタリングによる資金調達が注目されている。

ファクタリングの種類

 売掛債権によるファクタリングには、三者間ファクタリング二者間ファクタリングがあるが、ここでその主要な相違点を説明したい。一般的には、ファクタリング利用企業とファクタリング業者との間で契約を締結したうえで、債権譲渡を売掛先に通知する場合が「三者間ファクタリング」債権譲渡を売掛先に通知しない場合が「二者間ファクタリング」と呼ばれている。

 以下2つの図のうち、右図を見てほしい。三者間ファクタリングでは、売掛債権をファクタリング業者に譲渡し(右図①)、譲渡代金がファクタリング利用企業に支払われる(同②)。次にファクタリング業者は売掛先に支払いを請求し(同③)、売掛先はファクタリング業者に直接支払いを行う(同④)。一方、左図の二者間ファクタリングでは、売掛債権をファクタリング業者に譲渡し(左図①)、譲渡代金がファクタリング利用企業に支払われる(同②)。ここまでは、三者間の場合と同様であるが、次からが異なる。ファクタリング業者がファクタリング利用企業に売掛先からの支払の受領とファクタリング業者への引渡しの業務を委託し、ファクタリング利用企業は売掛先に請求して(同③)を行い、ファクタリング利用企業は売掛先から回収(同④)した金額をファクタリング業者に引き渡す(同⑤)。

 三者間ファクタリングは、ファクタリング利用企業にとって手数料率が低く抑えられるというメリットがある一方で、売掛先に債権譲渡の事実を知られるためその後の取引に影響が出るリスクがある。ファクタリング事業者にとっては、売掛先からの直接支払いを受けることができるためリスクが低いが、交渉コストが二者間ファクタリングに比べ大きくなる。

 二者間ファクタリングは、ファクタリング利用企業にとっては、売掛先に債権譲渡の事実を知られないというメリットがある一方、手数料率が三者間ファクタリングに比べて高くなる。ファクタリング業者にとっては、交渉コストが三者間ファクタリングに比べて小さいが、売掛先からの支払いはまずファクタリング利用企業に行われたうえで、当該支払金をファクタリング業者に引き渡すかたちとなるためその分リスクが高いというデメリットがある。

 さて、三者間ファクタリングについては、企業にとって資金調達手段であるという面もあるが、企業が売掛先に対して行う一連の請求関連事務の代行サービスとしても活用されている。たとえば、当社が提供する三者間ファクタリングサービスである「マネーフォワード ケッサイ」は、与信審査、請求書の発行・発送、入金状況の確認、未入金時の取引先への連絡といった請求に関連するすべての業務を代行することで企業の請求関連事務を効率化するサービスである。

 一方の二者間ファクタリングは、主として中小企業の資金調達手段として活用されている。上述のように、二者間ファクタリングは、売掛先に債権譲渡の事実を知られない。足元では売掛債権の売却に関する風評被害への懸念が徐々に薄れてきているとみられるとはいえ、中小企業にとっては売掛先との力関係もあって債権譲渡の事実を知られるとその後の取引に支障が出かねないという不安は依然として残っている。この点が、特に中小企業に二者間ファクタリングが選好されている理由である。


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著者プロフィール

  • 家田 明(イエダ アキラ)

    1988年 東京大学大学院理学系研究科修士課程修了、同年に日本銀行に入行。考査局、京都支店、営業局、金融研究所、金融機構局などを経て、2011年から2013年まで、鹿児島支店長。2016年に金融機構局金融高度化センター長に就任し、ITを活用した金融の高度化、リスク管理と内部監査、地域プロジェクト支援、金融機関の働き方など、金融機関のリスク管理・経営管理の高度化を支援。2018年に、マネーフォワードに入社。現在、マネーフォワードグループで企業間後払いサービスや売掛金早期資金化(ファクタリング)サービスなどを手がけるマネーフォワードケッサイ取締役会長。

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