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「銀行の融資は遅い」を変えるクラウドバンキングnCino日本代表に聞く、勘定系とは別のところにある価値

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2020/12/24 12:00

 銀行経営をめぐる環境が厳しさを増す中で、世界1,200行に業務を効率化するクラウドバンキング・プラットフォームを提供しているnCinoが日本法人を立ち上げました。海外ですでに高い評価を得ている同社サービスについて、日本法人代表の野村逸紀氏にお話をうかがいました。

顧客データを活かして、銀行のサービスをスマートに

――今回は、クラウドバンキング・プラットフォームを提供しているnCino(エヌシーノ)の日本法人代表に就任された野村逸紀氏にお話をうかがいます。nCinoのサービスは大手行からチャレンジャーバンクまでさまざまな金融機関に導入され、今年7月にNASDAQに上場して大きな注目を集めていますが、その成り立ちはどのようなものなのでしょうか。

野村:nCinoの創業者であるチップ・マハンはLive Oak銀行を設立し、銀行業務を効率化するシステムを開発しました。Salesforce.com(以下、セールスフォース)のプラットフォーム上で動作するバンクオペレーティングシステムは非常に評価が高く、2011年に融資システム部門をスピンアウトさせてソフトウェア会社「nCino」を立ち上げました。

nCino株式会社 代表取締役社長 野村逸紀氏1977年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、2001年に卒業後富士通に入社し公共マーケットの営業に従事。その後2005年にEMCジャパンに入社、2015年より流通サービス営業部長として、流通、物流、運輸、百貨店、コンビニ、ユーティリティ等の大手顧客向けマーケットを統括。2017年のDellとの統合後はデル・テクノロジーズの事業領域全体におけるマーケットの責任者としてカルチャー融合やチーム拡大に貢献。持続可能な経営に向けたITコスト構造の最適化や購買行動の変化に柔軟に対応するためのアプリケーション変革などを推進し、2020年、nCino日本法人代表 代表取締役社長に就任。

nCino株式会社 代表取締役社長 野村逸紀氏
1977年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、2001年に卒業後富士通に入社し公共マーケットの営業に従事。その後2005年にEMCジャパンに入社、2015年より流通サービス営業部長として、流通、物流、運輸、百貨店、コンビニ、ユーティリティ等の大手顧客向けマーケットを統括。2017年のDellとの統合後はデル・テクノロジーズの事業領域全体におけるマーケットの責任者としてカルチャー融合やチーム拡大に貢献。持続可能な経営に向けたITコスト構造の最適化や購買行動の変化に柔軟に対応するためのアプリケーション変革などを推進し、2020年、nCino日本法人代表 代表取締役社長に就任。

――「バンカーが作ったバンカーのためのシステム」と言われる所以ですね。

野村:2019年に日本法人を設立し、サービス提供に向けて準備を進めてきました。我々はキャッチフレーズとして"Worldwide Leader in Cloud Banking"を掲げているのですが、日本では「クラウドバンキング」のイメージが伝わりにくいように感じています。そこで「銀行体験の最適化プラットフォーム」と言い換えて、金融機関の方々にお伝えしてきました。この「銀行体験」は、銀行を利用されるお客さまの体験であると同時に、銀行内部の煩雑な業務のあり方を変えるという2つの意味があります。

――銀行といえば勘定系システムを思い浮かべる人が多いと思います。『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』(日経BP)によると、2019年7月に全面稼働した同行の新しい勘定系システムは「4,000億円以上、35万人月をかけて、IT企業1,000社が参画」した巨大なプロジェクトした。これは特に大規模な案件でしたが、何年かおきにこうした刷新を行なう金融機関の負担は相当なものだと思います。

野村:nCinoは、銀行が稼働させている勘定系システムを活かし、それと連携しながら動作するプラットフォームです。現在、世界で1,200ほどの銀行に利用されていますが、すべての銀行で既存の勘定系を活かしつつ、nCinoを活用いただいています。

 nCinoの特徴を3つ挙げるとしたら、まず、銀行業務のうち「融資」についての高い専門性を持ったシステムだということです。Live Oak銀行はもともと法人融資がメインで、そこから中小企業向けの融資、個人向けローン、住宅ローンというかたちでポートフォリオを広げてきました。nCinoの根幹にあるのは「融資」という業務プロセスの効率化です。

 次に、セールスフォースのプラットフォーム上で動作するので、同社のCRM(Customer Relationship Management)と連携して活用することができます。みずほ銀行が目指している「顧客中心の業務設計、最適な銀行運営」という意味において、セールスフォースのCRMと連携して動くnCinoはシステム依存ではなく、顧客理解をベースに業務を設計していくという発想になります。

 多様な融資を行っている銀行では、個々の案件を一気通貫で見て、貸付残高の状況や経営状況などに応じて、最適なタイミングで最適な融資額を最適なタームで提案できるかが重要になります。ユーザーのデータを中心に置き、顧客中心に融資サービスを作っていくというところにnCinoの強みを発揮できると考えています。

 最後に、nCinoはクラウドサービスとして提供され、従量課金で利用できます。リスクを極限まで抑えたかたちでのIT投資が可能であり、いつでもどんな端末からでも同じデータにアクセスできる。これによって銀行内部の意思決定からお客さまに価値を享受していただくまでの時間を極小化できるのです。

――「銀行の融資は手続きが大変で審査に時間がかかる」というイメージをnCinoによって変えることができると。

野村:こちらがnCinoの銀行側の画面です。いまどんな融資の問い合わせが入っているのか、個々の案件の状況はどうなっているかをチェックできるだけでなく、次に何をするべきかが表示されるので、担当者は素早く融資のフェーズを次に進めることができます。セールスフォースをお使いの方はわかると思いますが、画面の構成はセールスフォースとよく似ています。担当者が入力した情報はすべて集約、可視化され、さまざまな角度から分析できるので、「あの人に聞かないとわからない」といった業務の属人化を解消することにもつながります。

 一方、お客さまは、自分がその銀行で行っている取引の履歴や審査の状況などをマイページで、いつでも確認することができます。銀行内部の業務の進め方が変わることによって生まれるスピード感を、日本の銀行を利用しているお客さまにも体験していただきたいですね。


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著者プロフィール

  • 井浦 薫(編集部)(イウラ カオル)

    MONEYzineのロゴ下のキャッチコピーが「投資とお金のこと、もっと身近に」に変わりました。
    これから大きく変化していくこの領域で、注目の人やサービス、テクノロジーを紹介していきたいと思います。ウェブだけでなく、MarkeZine BOOKSの書籍編集も担当しています。

  • 慎 芝賢(シン ジヒョン)

    フリーカメラマン 日本大学芸術学部写真学科卒業後、朝日新聞出版写真部勤務。
    2014年フリーカメラマンに。
    雑誌・書籍・新聞・web媒体を中心に撮影を行う。

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