「自分が借りたい」だけでなく将来の街をイメージする
投資家は成長が期待できない会社の株は買わない。同様に不動産投資家も成長ができない街を買うべきではない。ましてや衰退することが分かっているような街に投資をするのは馬鹿といわれても仕方がない所業である。が、意外にそうした賢明とはいえない投資をする人は少なくない。なぜか。
ひとつには不動産を購入するときには物件そのものに目が行ってしまいがちだという点が挙げられる。分かりやすいのは新築マンションのモデルルームに行って舞い上がってしまうという現象。「この部屋、素敵!」というわけだが、どんなに素敵な部屋、建物でもシャッター商店街のど真ん中や24時間うるさい工場や道路のそばに建っていたらどうだろう? 逆に多少室内のセンスは悪くても建物がしっかりしていさえすれば、複数路線が利用できる駅の、駅から歩いて5分以内に建っているほうが資産としての価値はずっと高いのだ。不動産の価値の8割か9割以上は立地で、残りが建物で決まる、そう思えばいいだろう。
もうひとつの理由は成長する街、衰退する街が見分けられない、見分けにくいという点にある。シャッター商店街、歯抜け商店街が続くような街であれば、誰でもこの街はダメだと思うだろう。が、一見、成長しているように見えて、活気があるように見えて、将来はアブナイという街もある。難しさはそこなのだ。
例えば再開発あるいは大規模開発が行われ、大型店が進出、急速に人気が高まったエリアがあるとしよう。当然、駅前には大規模な新築マンションが建設され、少し離れて賃貸マンションも建設される。人気の街の新しい物件である、当初は借り手を見つけるのも簡単で、投資は成功に見える。

が、何年か経つと話題は他の新しい街に移る。さらに10年も経てば街のジリ貧状態は見えてくる。同年代ばかりが入居した大規模マンションは街の人口構成をいびつにし、将来は一気に高齢化が進むことが想定される。高齢化で街の購買力が落ちると、ビジネスにならないと大型店が撤退、病院が減少、そうやって街は衰退していくのである。
特に若い年代の場合は不動産投資を考える時に「自分が借りるとしたら」という意識が働きがちである。物件を見るときにはその視点は正しい。自分が借りたいと思う物件でなければ他人も借りたいとは思わないからだ。しかし、街を見るときには自分が借りるという視点だけに頼るのは危険。借りる人の視点には将来が含まれていない。そして、投資には必ず将来への視点がなくてはいけないからである。では、街の将来はどこで見ればいいのか。 (次ページへ続く)