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金融市場に棲む「マネーゲーム」という魔物

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2007/10/01 11:30

アメリカの住宅市場の10%程度を保証しているに過ぎないサブプライムローンが焦げ付いたからといって、欧米のみならず日本や中国の株式市場がぐらつくというのは、あまりに針小棒大な話。どうやら裏の理由が隠されているに違いない。(バックナンバーはこちら)

2006年のトップ25人の収入は140億ドル(1兆6,000億円)

 世界の金融市場には「マネーゲーム」という魔物が棲んでいる。すでに巨万の富を手に入れた者たちも、これから手に入れようとする者たちも、このゲームの魔力にはまっているようだ。どちらの側にいても、そのゲームに勝つために味方につけようとするのが「ヘッジファンド」である。

 いわゆる大富豪であれば、自らの資産をさらに増やすためにヘッジファンドを利用する。また、新たに大富豪の座を射止めようとすれば、自らがヘッジファンドを立ち上げるのも、その近道に違いない。もちろん成功すれば、の話であるが。ヘッジファンドは稼いでなんぼの世界。理屈も理論も関係ない。顧客の資金をいかに増やすか。それがすべてである。

 2006年、ヘッジファンドのトップ・マネージャー25人の収入総計は140億ドルを超えた。栄えある第一位の座を昨年に続き確保したジェームズ・シモンズは17億ドル(約2,040億円)を稼ぎ出している。

 シモンズといっても日本では馴染みがないだろう。しかし、“ヘッジファンド界のエルビス”と異名をとる、業界では有名な人物。「35歳限界説」がもっともらしくささやかれる世界にあって、今年68歳の現役プレーヤーである。

 彼は王者の貫禄を備えているといってもよい存在だ。しかしながら、元数学者にして、元国防総省の暗号解読のプロは人目につくことを嫌がる。なぜなら、彼にとって、ジョージ・ソロスのように政治に首を突っ込むようなまねは「見苦しい」ことだから。ソロスが「昔の名前で出ている」姿をあざ笑うように、シモンズは未来を読み解くコンピュータプログラム開発の先頭に立っている。「ルネッサンス・テクノロジーズ」と命名したファンドを立ち上げ、昨年は44%という驚異的なリターンをあげた。1988年の創設以来、これまで平均して38%のリターンを投資家にもたらしている。

世界の「ビリオネアー」

 ところで、世界には資産10億ドルを上回る「ビリオネアー」が950人ほどいる。そのトップに鎮座するのはマイクロソフトのビル・ゲイツだが、ヘッジファンドのマネージャーたちは「市場の先を読む力」で、大富豪の仲間入りを果たしているといえよう。そのスマートな稼ぎっぷりは、若く野心的な学生たちの人気の的になっている。

 たとえば、アメリカではハーバード大学やスタンフォード大学の優秀な頭脳がヘッジファンドの世界に自らの名前を残そうと必死になっている。中国でも北京大学や清華大学の学生たちが「投機基金」の研究に余念がない。世界最大のドル保有国になった中国では、政府の肝いりで「世界最強のヘッジファンド」創設計画も進められているようだ。

 彼らはアメリカのヘッジファンドの運用成績とファンドマネージャーの出身大学との相関関係や人脈を調べあげ、モデルとすべきヘッジファンドに研修生を送り込んでいる。中国政府がまとめた分析では、ヘッジファンドの運用成績はコンピュータソフトではなく、担当のファンドマネージャーのセンスに大きく左右されるらしい。そこで、優秀なファンドマネージャーをヘッドハンティングする動きを強め始めた。

 とにかく誰でも作れるのがヘッジファンドの特徴。その数は現在9,000を超えるとみられる。運用資金額は1.7兆ドル。数も資金も年々拡大しているが、個別のファンドの寿命は意外に短い。生まれる数も多いが、消え去る数も少なくないのである。それだけ厳しい世界といえよう。

 日本でもヘッジファンドの数は増えているが、まだ270程度で運用資産も360億ドルに過ぎない。まだまだ世界の2%しか占めていないマイナープレーヤーなのである。とはいえ、日本人の個人資産1,400兆円は欧米のヘッジファンドに続々と吸い寄せられているのが現実。「円キャリー・トレード」なくしては、世界のヘッジファンドも軍資金に事欠く有様といえよう。日本は鉄砲の弾を提供していながら、鉄砲の撃ち方を知らないのである。

シモンズの成功報酬は収益の44%

 その点、ソロスにせよ、シモンズにせよ、頭脳プレーヤーが活躍するヘッジファンドの本場はやはりアメリカであろう。


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