お金を貰った詐欺被害者
「口座にお金が振り込まれました!」
詐欺の被害者がこう口にした。何とも奇妙な詐欺の法律相談を受けたのだが、相談の概要は以下の通りだ。
佐藤さん(仮名)は、自分の預金通帳の記帳を行ったところ、自分の知らない振込名で3万円の振り込みがなされていることに気づいた。色々と確認してみたが、誰が振り込んだかはわからず仕舞い。そこでそのまま放置しておくことにした。実は、しばらく経っても誰の振込か分からなければ、臨時収入にしようと内心ほくそ笑んでいたのである。
ところが、振込まれてから1週間ほど経ったときに、佐藤さんの携帯電話に突然一本の電話がかかってきた。電話に出ると男性の声で 「○○ファイナンスの高橋(仮名)です。佐藤さんの携帯電話ですね。お約束の利息3万円が振り込まれていないのですが、きちんとお支払い頂けますか」 と一方的に要求された。
何のことかまったくわからない佐藤さんは 「お金を借りた覚えはないのですが、何かの間違いではないでしょうか」 と答えた。
すると、それまで丁寧な口調で話していた男が声を荒げて 「何を言っているんだ! 佐藤さん、すっとぼけるつもりなのかい? 一週間前に6万円借りたいというから、利息を引いた残額の3万円を振り込んだだろう」 と怒鳴った。
あの3万円か・・・、佐藤さんは正体不明の振込のことを思い出すと同時に、背筋に冷たい汗が流れたのを感じた。
身に覚えのない借金
佐藤さんはドキドキしながら 「確かに一週間ほど前に誰か分からない人から3万円の振り込みがありましたが、これは借り入れしたお金ではありません。私はあなたからお金を借りたことなどありませんよ」と高橋に告げた。
すると、男は大声で捲し立てた。
「オイオイ!すっとぼけるのもいい加減にしろよ。頼まれもしないのに金を振り込む奴がいるかい。あんたが貸してくれと頼むから仕方なしに貸したんじゃないか。とにかく明日までに金利の3万円を振り込めよ」。
佐藤さんが、振り込めと言われても振込口座を知らないと悲痛な声で訴えると、男は口座番号を告げ、「いいか、ちゃんと振り込むんだぞ!」と念を押して電話を切った。佐藤さんのシャツは汗でびっしょりと濡れ背中に張り付いていた。
実際、佐藤さんは○○ファイナンスからお金を借りた覚えなどない。しかし高橋が言うように、頼まれもしないのにお金を振り込む人などいないだろう。
「誰か別人が自分を名乗って借りたのか? としても、自分の口座番号や携帯電話番号をどこで知ったのだろう。自分の友人が伝えたのだろうか」。いろいろと思案したが謎は一向に解決しなかった。
翌日、3万円を振り込むべきか佐藤さんは悩んでいた。悩んだ挙げ句、すでに振り込まれている3万円は返却しなければならないと思い、3万円を金利としてではなく返却する意図で振込を行った。
恐怖の借金取立て
しかし、3万円の振り込みから1週間が経過したときに、また佐藤さんの携帯電話が鳴った。