「国際競争力」というビミョーな問題とは
前回、消費税が25%でも国民生活が豊かで、成長し続けている北欧型モデルを紹介したところ、多くの反響をいただいた。
これまで、国家経済の視点から、市場と平等は相対関係があり、両立は困難だと考えられてきたが、フィンランドやスウェーデンなど北欧諸国がこの「常識」を覆したわけだ。
日本も大いに学ぶべき点が多く、このシステムを日本風にアレンジして、新しく日本型の成長モデルを構築することが大切だが、その前にもうひとつ問題があった。それは、よく経団連などの経済団体が口にする「国際競争力」の問題である。
いくら市場と平等が並列しても、企業が儲からなければ経済が成長しない。そのために、現在よくいわれるのは「国際競争力」の維持である。
経済がグローバル化する中で「国際競争力」を維持するためには、企業はスリムになり、そして税金などの社会的な負担も減らす必要があるというのだ。
経済界を中心とした、そんな要望を受けてここ数年、企業に対して大減税をおこなってきた。しかし、それにもかかわらず、さらに下げようとする圧力が高まっているのだ。
一方で国民一人ひとりに対しては、所得税の恒久減税などが削減されたり、縮小されたりして、ますます税金の負担は増えている。そのうえ、年金や健康保険料など社会保険料の負担と同時に、ガソリン代や食費も上昇して、ますます暮らしにくくなっているのが現状だ。
このままいけば社会的な格差が拡大して、より多くの国民が困窮するところまできている。そこで本当に「国際競争力」を維持するために、さらなる減税や企業優遇措置が必要なのか、そして本当に日本の企業の国際競争力が低下しているのかをレポートしてみたい。
「至れり尽くせり」で史上最高益を更新する大企業
まず、企業収益の現状から見ていこう。
財務省の法人企業統計データによると、資本金10億円以上の大企業(金融・保険業を除く)における2006年度の経常利益は、32.8兆円と史上最高を更新して、バブル期のピークの1990年度の18.8兆円の1.74倍に達している。
ところが、企業による税負担の方は13.9兆円から13.7兆円とほぼ同水準にとどまっている。
個々の企業別に見ても同様に、トヨタの場合、06年度の経常利益は1兆5,552億円で、バブル期のピーク(7,338億円)の2倍以上だが、税負担は4,782億円から4,746億円と、ほとんど横ばい状態だ。
この原因は3つあるが、まず法人税の税率が大幅に引き下げられたことだ。80年代には最高で40%~43.3%だった法人税率が、90年度には37.5%に、98年度には34.5%に、99年度以降は30%になった。実に31%も低減されていて、その間の減税効果は、トヨタの場合約2,000億円にものぼる。
2つ目の原因は、2002年度から連結納税制度が導入されたり、研究開発減税が大幅に拡充されたり、新規の大企業減税が実施されたことだ。たとえば研究開発減税は、トヨタ 1社だけでも760億円(2006年度)にのぼるという。
3つ目の原因は、大企業が多国籍企業化や企業再編を行う際に、以前からあった配当益金不算入制度や外国税額控除制度などの大企業優遇税制の効果が大きくなったことだ。(次ページへ続く)